世界の全てを敵に回しても



君と一緒にいたかった。

セルッチとアルタンは子供の頃からの友達。
お金持ちさん貴族さんの毎月行われるステイタスを見せびらかすためだけに開かれたパーティーで初めて会った。
アルは貴族の御子息様で、セルはきっと成りあがりの大富豪。(ていうかセル一代で築いたとかもいいけど、セル元々金持ちっぽい匂いがするwwwww常識知らなそ(ry)
それから年に何回かは会うようになり、近況報告したりくだらないものに金掛けて遊んだり、ダラダラ過ごした。
(一回会ったら1ヶ月とか一緒に過ごしたりとかする(別荘とかで)。大抵はセルが押しかけてくる。でも時々新しい家○○(国名)に建てたからおいでよーvとかでアルがお呼ばれされたりする。

そんなアルとの交友は大人になってからも頻度は少なくなったものの続いてて、
セルはアルと一緒にいられる時間を何よりも優先して、
アルもセルと一緒に居る時は穏やかに微笑んだり、ちょっと冗談なんか言ったりして二人でキャイキャイしてればいいよ!

そんなアルとある時期から連絡が取れなくなった。
連絡する手段が無いのではなく、どうやら連絡する暇が無くなったらしい。
貴族が道楽に事業を立ち上げる事はよくあることだが、アルに限ってそんな真似はしないと思っていたのだが…。

心に言いようも無いわだかまりを抱えたままの日々が終わりを告げたのは、招待された大使館でのパーティー、その中で爆音と共に現れた君を見つけた時だった。

「アルベルト…?」
「!…貴様も招待されて来てたのか…」
「アルベルト!久しいじゃないか!一体何をしていたんだい?まぁいい、君に会えた。十分だ。^^
それにしてもいくらパーティーと言えどその登場はちょっと派手じゃないか…」
ドゴオオオオオォン…ッ!

久しぶりの再開に相手の答えも聞かずに浴びせる私の言葉は、爆音によって遮られた。
キャアアアアアァ!!
そして甲高い女の断末魔。続く悲鳴。
パーティーはたちまち血と硝煙に塗れた地獄に変わった。
その中で私は、その断末魔に向けて衝撃を放つアルを、ただ見ていた。
少し痩せたかなぁ…髭も伸びて…あぁそんなに激しく動いたら髪が乱れちゃうじゃないか…
久しぶりに再会した相手は大量殺人鬼となっていた。しかし私は、煙が充満し、鼻を焼けた肉の臭いが刺激するその場に居たが、彼を止める気などまったく無かった。
むしろ私は、ずっとこの光景を眺めていたいと思った。
いつもの彼とは違う、私が知る限り今まで見せたことの無い、彼のギラギラした瞳…それが見れた、それだけで今までのわだかまりが、会えなかった時間が、意味を持つ。

そんな事を考えていると、いつの間にか悲鳴は聞こえなくなっていた。
もう生者の気配もしない。

「…何故そんな顔でいられる…」
アルベルトが私の側まで来ていた。きっと私は、彼をうっとりとした笑顔で迎えているのだろう。
「いやぁ…凄かったねぇ。普段の君も好きだけど、こんなパワフルな君もいいものだねぇ^^」
私の返答が気に入らないのか、彼を顔をしかめながら、ただ一言
「帰れ」
彼なりの、精一杯の譲歩だろう。しかし彼も、私がそんな一言で言うことを聞かないことを知っている。
「そんなこと言わないでさぁ、僕は君と会えなかったここ何年、とっても寂しい思いをしたんだよ?分かってる?」
「知らん」
「まぁでもこうして劇的に再会できたわけだし、私は満足なのだけれどね!^^」
「…おかしな奴だな、この状況が嬉しいのか?」
「もちろん、君の違った一面も見れたことだし、君の事だ、何か目的があったんだろう?」
「…。」
アルベルトは少し困ったように顔をして、微笑んだ。
「フン、貴様相変わらずだな。まぁいい、どうせこのまま去っても貴様はついてくるだろうから、今諦めさせてやる」
アルはまるで明日の天気でも伝えるような口調で、自分は世界を変えるのだと言った。

『BF団』時々名の聞く、秘密結社だ。いくつか大きな事件を起こしていて、規模もかなりのものらしい事だけしか分からない、謎の反政府集団。
彼らの目的は、『世界征服』。
この世界の全てを、変えようと言うのだ。
彼はそんな思想を思い描いてはいなかっただろう。彼の性格からいえば、自分の力が、何処まで通用するのか、試したかった。そんなところだろう。
「国が『対BF団専用』の特殊組織まで作った、そんな組織にわしはいる、だからお前はもう関わ…」
「凄いよアル!!世界を変える!?何でそんな面白そうな事を僕に言ってくれなかったのさ!ズルイよ!!」><
アルベルトがしばらくして、しまったという顔をしたが、もう遅い。
「えぇい!貴様分かっているのか!?これは貴様がやるような道楽の業ではないのだぞ?飽きっぽい貴様のことだ。どうせすぐ抜けたいと言うに決まってい」「嫌だ!!私も入る!!私もやりたい!!」
「何故だ!?何故そこまでこだわる!?」
「だって君はこれからもずっと入っているのだろう?そしたら二人で会う時間なんて一向に作れないじゃないか!!そしたら私が入るしかないじゃないか^^」
「〜〜〜〜ッ!世界を、全世界を敵に回すのだぞ?それでも…」

「それでも君と一緒がいい」 

「そこまでだBF団!!よくもこんな目出鯛場で暴れてくれたなぁ!我らが来たからには好きにはさせん!!大人しくお縄にかかれぇィ!」
バリバリッーーーーー!!
長ったらしい名乗りをあげて部屋に飛び込んできたのは今まさに話をしていた『対BF団専用』の特殊組織、『国際警察機構』。
アルベルトがまず先手の一発。さっきの焼かれた肉達とは違う、ヒラリとかわされた。
「フハハー!!よく来たなわっぱ共!!貴様ら国警に、わしが捕まるかああああああ!!」
あぁ、彼がより一層眼を輝かせた。彼のステージが始まる。
でもその前に―…
「その首もらったぁ!」ヒュッ ガッ!
Σ「ぬっ!いつの間にッ…!!」
ビシュッ
「!!?ッ…何奴!!?まさか他に仲間が!!?????」
「そのとーり!仲間も何もアルベルトとは、親友…じゃなくて盟友である!セルバンテスである!!今日からBF団の一員なので、以後お見知りおきを…(ペコリ)」
「アルベルトと盟友関係!?…ッならば力は同等かそれ以上…退け!一旦退け!!」
バタバタバタ…

「…貴様知らんぞ…どうなっても」
アルは呆れているようだ。でも顔をこちらに向けてくれないのは、それだけじゃないよね?
「フフフ…もう言っちゃったもんねー。ああいう名乗り一度やってみたかったんだvまぁまぁそう怒らずに、本部に報告しに行きましょvねぇ…盟友?」
「…。走るぞ」
否定しないのはOKの印。耳が赤く見えるのはきっと気のせいじゃない。

ねぇアルベルト、君はきっと僕を巻き込むつもりは無かったんだよね。
だって死ぬかもしれない、反逆因子、国から追われて見つかったら、すぐ排除されてしまう者。だから君は僕との連絡を絶った。
でもね、アルベルト、僕はそれでもいいよ。君が側に居るなら、世界中が敵だって、かまわない。
世界征服、楽しみだね。 君となら、変えられる気がする。
変えられなくても、きっと楽しいよ。君となら。







ずっと君と一緒に…いたかった